インプラント手術で起こりうるトラブルと予防方法

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
【医師監修】インプラント手術で起こりうるトラブルと予防方法

歯を失ったときの選択肢の1つとしてインプラント治療があります。
外科的施術が必要になる治療法ということもあり、施術時や施術後のトラブルについて、ご自身の身体の状態とともに詳しく知っておく必要があると思います。
今回は、起こりうるトラブルやトラブルを避ける為にできることについて解説します。

1.インプラントとは

1-1.インプラントってなに?

歯科におけるインプラント治療とは、むし歯や歯周病、ケガ、腫瘍、もしくは先天性欠如(もともとなかったという意味です。)などの原因によって失われた永久歯に対して、本来あった歯の代わりとなるべく、埋め込まれた人工の歯のことです。
広い意味では、歯だけでなく、顎の骨や顔の欠損を補う治療も含まれます。

1-2.インプラントの構造

imp
インプラントは、3つの部分で構成されています。

1-2-1.フィクスチャー

インプラントの歯根の部分に当たるところで、骨の中に埋められてる部分です。チタニウムで作られています。ねじの様な形態をしており、骨に穴を開けた後、木ねじを入れる様な感じで骨に埋め込みます。

1-2-2.上部構造

インプラントの歯冠の部分です。金属を全く使わないオールセラミックや、裏側を金属で補強したセラミックなどで作られています。
歯の形や色にとても近づけてあり、とても自然な仕上がりの被せものになります。

1-2-3.アバットメント

フィクスチャーと上部構造を繋げている部分です。

1-3.歯科でのインプラントの歴史

歯科でのインプラント治療の歴史は意外と古いのです。1900年頃から、つまり、100年以上前に、失われた歯のあった部分の顎の骨の中にインプラントを埋め込み、これを土台として利用する治療が行なわれたという報告があります。
その後、いろいろなインプラントの方法が開発されてきました。しかし、そのどれもがインプラントに用いる材料や方式などに問題があり、長期的にみるとあまりよくありませんでした。
そんな中、1960年代に、スウェーデンのブローネマルクという口腔外科医が開発した方法が、現在の主流となりました。
この方法には、チタニウムで作られたインプラントを埋め込むと、その周囲に骨が成長していき、インプラントと結合することで、インプラントを強く支えてくれるようになるという特徴があります。このインプラントと骨との結合を、オッセオインテグレーションとよんでいます。

2.インプラントの利点と欠点

インプラントと、その他の治療法、たとえばブリッジや入れ歯と比べた場合の利点と欠点は、以下の様になります。

2-1.利点

見た目が非常にきれいで自然です。
ブリッジの様に、他の歯を削る必要がありません。
また、違和感がありませんし、毎食後に外して洗う手間もありません。
適切に維持出来れば、長持ち出来ます。

2-2.欠点

インプラントを埋め込むための外科処置が必要です。
全身状態によっては、受けられないことがあります。
費用が高額になります。
治療後にきちんと維持が行われないと長持ちできません。

3.インプラントの安全性

3-1.素材の安全性

インプラントは、チタニウムもしくはチタニウム合金で作られています。チタニウムは、整形外科で足の骨の人工骨頭にもつかわれている金属です。非常に硬く、腐食もしにくい特徴があります。しかも、骨との親和性が高く、チタニウムで作られたインプラントが骨に埋め込まれると、その表面と骨が結合するほどです。
また、アレルギーがおこることもほとんどありません。
チタニウムに関して、安全性が疑問視されることはありません。

3-2.手術の安全性

インプラントは、インプラントを骨に埋め込まなければならないので、手術が必要です。
手術は、骨を削るので不安を覚られるかもしれません。
しかし、インプラントの術式のほとんどが、規格化されています。専用の道具を順に使っていくだけで出来る様に、簡素化されています。
必要以上の侵襲が加わることがない様に出来ていますので、そういった点でも安全性は高いです。

ただし、あくまでも外科処置ですから、全身状態によっては出来ないこともあります。こうした見極めをしっかりすることも、安全性を担保するためには必要なことです。

4.インプラント施術時に起こりうる6つトラブル

4-1.下顎

4-1-1.下顎神経麻痺(かがくしんけいまひ)

下顎神経とは、下顎の奥歯の下方に走っている太い神経のことです。下顎の先や下唇の感覚を司っています。下顎神経が走っている位置や、その周囲の骨の厚みは人それぞれ異なります。インプラントを埋め込むにあたって、下顎神経の周囲の骨にダメージが加わると、神経が麻痺し、下顎の先や下唇が痺れてくることがあります。

4-1-2.舌神経麻痺(ぜつしんけいまひ)

舌神経とは、舌の前方2/3の感覚を司る神経です。下顎の親知らず辺りの内側を走っています。下顎神経とは異なり、周囲に骨はありませんので、レントゲン写真を撮影してもわかりません。インプラントを埋め込む際に、舌神経を損傷すると、舌の感覚や味覚がわからなくなることがあります。

4-1-3.口腔底迷入(こうくうていめいにゅう)

口腔底とは、U字型をしている下顎の骨の内側で、舌より下の部分です。
インプラントを埋め込む時に、深く入れ過ぎたり、埋める向きを間違えたりすると、下顎の骨を突き抜けてしまうことがあります。そのとき、下顎をインプラントが貫通してしまうと、口腔底にインプラントが落ち込んでしまうことがあります。
もし、その部分でインプラントが原因で炎症が起こると、お口が開かなくなてしまいます。
口腔底に迷入してしまったインプラントは、非常にとりだしにくいです。

4-1-4.異常出血

上顎より下顎に多いのですが、上顎に起こらないわけではありません。
下顎動脈や口腔底部の動脈などをドリルで傷つけた場合に起こります。出血点が確認出来ず、止血困難な場合は、すみやかに病院に搬送してもらう必要があります。

4-2.上顎

4-2-1.上顎洞穿孔(じょうがくどうせんこう)

上顎洞とは、鼻の横、上顎の奥歯の上、眼の下にある頭蓋骨の空洞です。上顎の骨が薄い場合、インプラントを入れるための穴を開けた時に、上顎洞の底の部分に穴があいてしまうことがあります。これを上顎洞穿孔といいます。
この状態になると、お口に含んだ水が、鼻に流れてしまうことになります。

4-2-2.上顎洞迷入(じょうがくどうめいにゅう)

上顎洞穿孔をおこしたことに気がつかず、更にインプラントを埋め込もうとすると、上顎洞の中にインプラントが落ち込んでしまうことがあります。これを上顎洞迷入といいます。
こうなりますと、お口から水が鼻に流れ込むだけでなく、インプラントが原因で蓄膿症を起こしたりします。
上顎洞に落ち込んでしまったインプラントは、取り出さなければなりません。

5.インプラント治療で起こりうる7つのトラブル

5-1.歯肉退縮

特に前歯に多いのですが、インプラントを入れる部分の歯茎に近いところの骨がうすいと、インプラントを入れてからしばらくすると、歯茎が下がってくることがあります。場合によってはインプラントのフィクスチャーが露出することもあります。

5-2.感染

インプラントが細菌に感染してしまうことがあります。細菌感染を起こしますと、症状が軽い段階なら、インプラントの周囲が腫れてくるだけなのですが、重篤な感染を生じますと、骨髄炎とよばれる骨の炎症や、蜂窩織炎とよばれる顔まで、更に腫れると首まで腫れた状態を引き起こすことがあります。

5-3.インプラント周囲炎

インプラント周囲炎とは、歯周病のインプラント版と思ってください。歯周病と同じく、初期はインプラントの周囲の歯茎の炎症から起こります。これをインプラント周囲粘膜炎といい、歯肉炎の様なものです。この段階で適切に治療が受けれればいいのですが、更に進行しますと、インプラントの周囲の骨に炎症が波及し、インプラントが抜けてしまう原因になります。

5-4.上部構造の破折

上部構造がかけたり、割れたりすることがあります。噛み合せの力が強過ぎるときに起こります。上部構造が破損した場合は、上部構造を外して修理することになります。修理が困難な場合は、上部構造を新しく作り直すこともあります。

5-5.インプラントの破折

インプラントに過大な力がかかっていると、フィクスチャーが折れてしまうことがあります。こうなれば、インプラントを撤去しなければなりません。

5-6.インプラントの動揺

インプラントが、グラグラと動き出すことがあります。
その原因は、インプラント周囲炎だけでなく、上部構造を止めているネジの弛み、インプラントの周囲の骨の吸収など、いろいろあります。

5-7.インプラントの脱落

インプラントの周囲の骨が薄かったり、少なかったりすると、インプラントと骨がきちんと結合しても、維持する力が足りずインプラントが抜けてしまうことがあります。

6.インプラントにおけるトラブルをさけるために

6-1.患者の状態の把握

インプラントは、外科治療のひとつです。インプラントの安全性のが高いといっても、やはり「きちんと適切に行なえれば」という前提の元の話です。
そのためには、インプラントを受ける患者の全身状態、すなわち”治療を受けている病気の有無、あるならその治療内容”も、それだけでなく”今まで治療を受けたことのある病気の内容”、”薬や食べ物にアレルギーがないか”などを十分に確認しておかなければなりません。
こうした情報を、必ず主治医に伝えてください。お薬手帳があれば、提示してください。

・全身状態と投薬のチェックリストについては、以下の記事で詳しく説明しています。
専門家監修|インプラント治療を成功させる全身状態と投薬のチェックリスト

6-2.無理のない治療計画

CT画像
出典:株式会社モリタ
インプラントを入れようとする場所の、骨の厚みや形を術前にレントゲン写真やCTで確認し、適切なインプラントの大きさや数を決定してもらってください。

・医院の選び方については、以下の記事で詳しく説明しています。
専門家監修|良い歯科医院でインプラントを受ける5つの条件

6-3.感染予防

インプラント手術に際しての細菌感染を防ぐには、器材の滅菌や消毒をしっかりと行なうだけでなく、術者や助手の感染予防対策も大切です。
インプラントを受ける歯科医院で確認してください。

6-4.下顎神経麻痺

下顎神経麻痺は、下顎神経を傷つけたり、下顎神経をインプラントが圧迫したりすることで起こります。インプラント手術を行なう前に、下顎神経が走行している下顎管とよばれる部分の骨の状態や、インプラントからの距離、方向などをレントゲン写真でしっかりと確認しておきましょう。その際、CTを撮影すると、立体的に状態を把握出来るので、とても有用です。

6-5.舌神経麻痺

残念ながら、舌神経を術前に確認する方法はありません。レントゲン写真やCTでは見ることが出来ません。軟組織の描写に優れたMRIでもみえません。最新鋭のMRIでなんとか見ることが出来ますが、設置されているところは少ないのが現状です。
現状では、舌神経が一般的に走っているところを念頭に置き、気をつけてインプラント手術をするしかありません。

6-6.口腔底迷入や異常出血
下顎の骨の厚みや形態を、術前にCTで確認しておきましょう。

6-7.上顎洞穿孔・迷入

上顎洞底の厚み、洞底部の骨の形状を術前に、CTでしっかりと確認しておきましょう。

6-8.歯肉退縮

術前に、歯茎に近い部分の骨の厚みを確認します。そして必要に応じて、骨の移植等を行ない、骨の厚みを補う様にしてもらってください。

6-9.メインテナンス

インプラントは、上部構造まで入れて仕上がったら終わりではありません。インプラントを適切に維持するために必要なことが、メインテナンスです。
メインテナンスは、自宅で行なう日々のケアと、定期的に歯科医院でうけるケアにわけられます。

日々のケアは、食後の歯みがきです。歯みがきをていねいに行なうことで、インプラントの周囲の炎症を予防しましょう。
そして、磨き残している部分や、歯みがきではとれない歯石を定期的に歯科医院で取り除いてもらうのが、歯科医院でのケアです。
このとき、インプラントが緩んでいないか、噛み合せの力が過大になっていないか、そういったこともチェックしてもらってください。
歯科医師との二人三脚で、インプラントを長持ちさせる様にしましょう。

・インプラントのお手入れについては、以下の記事で詳しく説明しています。
インプラントはお手入れが重要!寿命を延ばすお手入れ完璧ガイド

まとめ

インプラントは、材料も治療法も安全性の高いものですが、まったく危険性やトラブルがないわけではありません。
インプラントの危険性やトラブルを避けるためには、インプラントを入れる部位の骨の厚みや形状を術前にしっかり確認することが大切になります。
そして、日々のケアや歯科医院でのメインテナンスをうけることで、インプラントを長持ちさせる様にしましょう。

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

入れ歯専門歯科「ハイライフグループ」での入れ歯治療の特徴

歯が抜けて入れ歯治療などでお悩みの方へ、当サイト掲載の入れ歯の専門家へ、噛める入れ歯治療の依頼を受付しております。

現在のお悩みやご要望をお話をお聞きして、お口のなかや、入れ歯の状態/問題となる部分治療が必要になる箇所を細かく診断した結果をもとに、 最適な入れ歯の治療内容とご費用・来院期間などを丁寧にご説明させて頂きます。
当グループでの診断結果をもとに、きちんとご納得されて、初めて治療の始まりとなります。

もちろん、入れ歯をお作りする前に、虫歯や歯周病、抜歯などの必要な処理も合わせてお受けいたします。

ブログの購読はFacebookが便利です

この記事が気に入ったら
いいね!しよう

最新情報をお届けします

Twitter・RSSでもご購読が可能です。

スポンサーリンク

おすすめの関連記事